
想い出
トマトにきゅうり、スイカにメロンなどなど、
涼を感じる青果がお店にずらっと並ぶようになりましたね。
もう少ししたら、白桃に梨、葡萄も並ぶ頃でしょうか。
目にも美味しいこの季節が来るたびに、思い出すことがあります。
それは、昔、幼馴染みのお母さんがおやつとして出してくれた葡萄「デラウェア」です。
※当時は昭和。粒は小さめの品種で、葡萄といえばこれが定番でした。
その日はとても暑かったので、風通しのよい台所に呼ばれました。 やわらかな陽光が差し込む、明るい空間です。 「…台所? !」 丁寧にでも急いで手を洗い、2人、席に着きました。 |
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すると、私たちの目の前に、キラキラした赤紫色の大きな塊が置かれました。
初めて見る「それ」は、繊細な文様が入った硝子(菊繋ぎと呼ばれる種類に似ていた)の器に、
たくさんの氷とともに盛られた「見慣れたはずの」デラウェア2房でした。
しっかり冷やされた「それ」は、息をのむほど美しく、しばし見惚れていたと思います。
お母さんの声で我に返った私たちは、ようやく手を伸ばしました。
キラキラと輝く中から口に運んだひと粒は、まるで芳醇な香りのする甘い宝石で。
その美味しさに思わず、彼女と2人、顔を見合わせました。
幸せに浸りながら夢中で頬張る私たちを見るお母さんの眼差しは、
まるであたたかな陽だまりのようでした。
お店に並び始めたら、お洒落な器に盛って、娘とデラウェアを堪能しようと思います。
それから、久し振りに彼女を誘って、思い出話に花を咲かせようと思います。
スタッフ K.T